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日朝作業部会まとめと拉致問題停滞の内的要因

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 台風9号が東日本を縦断、各地に大きな被害を及ぼしたようです。
 被害に遭われた方には心よりお見舞い申し上げます。
 台風が去った後もしばらくは土砂崩れや水害等が心配されますので、どうか皆様、お気をつけ下さい。

 さて、9月5日〜6日の2日間、モンゴルで日朝作業部会が行われました。
 台風と重なったせいかマスコミの扱いも小さめだったようですが、ちょこっと振り返ってみます。
■前日(9月4日)
北朝鮮が拉致被害再調査なら、政府「過去の清算」協議検討(読売9/5)
 【ウランバートル=黒見周平】政府は4日、6か国協議の第2回日朝国交正常化作業部会で北朝鮮が拉致被害者に関する再調査の要請に応じた場合、北朝鮮が求める「過去の清算」に関する新たな協議の場の設置に同意する方針を固めた。

 モンゴルの首都ウランバートルで5、6日に行われる作業部会では、「過去の清算」を含む国交正常化問題と拉致問題が主要課題となる。北朝鮮の核問題をめぐり米朝が歩み寄りを見せる中、日本政府内にも「基本方針は維持しつつ、柔軟な姿勢を見せ、事態の打開を図る必要がある」(政府筋)との声が出ている。

 このため、日本は作業部会で拉致被害者の再調査を求め、北朝鮮が再調査を表明すれば、北朝鮮の求める「過去の清算」に関する分科会の設置などに前向きに応じることにしたものだ。
(2007年9月5日15時40分 読売新聞)

 日本が先に譲歩してしまった(T^T)
 たとえ北朝鮮が「再調査の要請に応じる」と言ったとしても、本当に再調査するかどうかわかったもんじゃないのに。

 嫌な予感を抱えたまま、日朝作業部会がスタート。

■1日目(9月5日)
「拉致解決が必要」 日朝部会初日、過去の清算は平行線(中日9/6)
 【ウランバートル=西川裕二】六カ国協議の日朝国交正常化に関する作業部会は五日、ウランバートル市内のモンゴル政府迎賓館で初日の協議が行われ、日本の植民地支配に対する「過去の清算」を含む国交正常化問題を中心に協議した。

 日本側代表の美根慶樹・日朝国交正常化交渉担当大使は冒頭、作業部会に臨む日本政府の基本方針を説明し、「過去の清算をするにしても、拉致問題の解決が必要で、両方やっていく必要がある」と述べ、拉致問題解決に向けた北朝鮮側の具体的対応を求めた。

 これに対し、北朝鮮側代表の宋日昊(ソン・イルホ)日朝国交正常化交渉担当大使は、拉致被害者・家族の帰国などを挙げ、「日朝平壌宣言後、一定の措置をとってきた」と説明したが、拉致問題を「解決済み」として日本側を激しく批判した三月の前回作業部会でのような発言はなかった。

 日本側は六日の協議で、拉致問題をめぐる北朝鮮側の立場をただす。

 過去の清算に関して、宋氏は、「人的、物質的、精神的被害に対する清算が必要だ」と指摘し、在日朝鮮人の法的地位、文化財返還のほか、従軍慰安婦や朝鮮人強制連行、虐殺などを列挙した。

 これに対して、日本側は二〇〇二年の日朝平壌宣言に沿って、国交正常化後に過去の清算も含めた経済協力で一括解決する方式が「唯一の現実的解決策」と重ねて主張。

 議論は平行線に終わったが、宋氏は「相違は明らかだが、互いの立場への認識は深まった部分がある」と語り、引き続き協議することを確認した。

 というわけで日本は北朝鮮の要求を呑んだ形で、初日は「過去の清算」から入りました。
 (北朝鮮側の主張……従軍慰安婦だの朝鮮人強制連行だの虐殺だの、ツッコミ始めるとキリないので今回はスルーします)

 日朝平壌宣言、日朝平壌宣言って、日本はいつまでこれに縛られるんでしょうね。向こうはミサイル撃ったり核実験したり、裏切り行為を何度もしてきているのに。
 どうなったら日本は宣言を破棄するの?本土にミサイルでも撃ち込まれない限りダメなの?

 そこまで我慢して2日目、肝心の拉致問題はどうなったかというと——。

■2日目(9月6日)
日朝作業部会「拉致」進展なし 協議継続は確認(産経9/7)
 【ウランバートル=名村隆寛、赤地真志帆】北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の日朝国交正常化作業部会は6日、モンゴルの首都ウランバートルで2日間の協議を終えた。日本側は拉致被害者の再調査と拉致実行犯の引き渡しなどを要求したが、北朝鮮側は「拉致問題は解決済み」との従来の立場を崩さず、日本側が最優先課題に位置付けてきた拉致問題での進展はまったくないまま、協議継続を確認したにとどまった。

 協議終了後、日本側代表の美根慶樹日朝国交正常化交渉担当大使は記者団に「北朝鮮の拉致問題に関する主張は変わっていない」と述べ、進展がなかったと説明。また北朝鮮側が「日朝関係は悪化しておりさらなる措置を取る状況にない」と述べたことを明らかにした。

 一方、北朝鮮の金哲虎外務省アジア局副局長はモンゴル外務省で会見し、日本の植民地支配など「過去の清算」について「進展があったと評価する」としたが、拉致問題について「すべて解決したとのわれわれの立場を表明した」と言明。拉致被害者の再調査について「(日朝関係の)環境が整い信頼感が構築されれば今後、論議される」と言うにとどまった。

 また、日本側が引き渡しを要求した日航機よど号ハイジャック事件の実行犯について、「日本政府とよど号関係者で協議する問題だ。そのための場所を用意する準備がある」と述べたが、引き渡しには応じなかった。

 日本側は今回の協議で、「過去の清算」を先行協議する形をとり、北朝鮮が拉致問題で前向きな対応をとるよう期待したが、具体的な成果は出ないままに終わった。
(2007/09/07 01:54)

 やっぱりね(T^T)
 まぁ最初から予見できたことではあったんですけどね。だって北朝鮮は今、動く必要は全くないわけですから。

 今の北朝鮮が対日外交でやるべきことがあるとしたら、せいぜい「我が国は日本との関係改善に取り組んでますよ」ってアメリカ向けのポーズを取ることぐらいでしょ。
 今回の日本側とのやりとりの中で、これまでのように「拉致問題は解決済み」と言い張ることがなかったのは、その証左ではないでしょうか。
 (但し北朝鮮側は部会後の会見で、「これまでと同じく、すべて解決したとのわれわれの立場を表明した」と言い放っています)


 魚拓を取り忘れたからリンクもう切れちゃってるけど、9月6日夜のNHKニュースでこんなくだりがありました。
 日本側代表・美根大使の協議終了後の弁です。

日本と北朝鮮の作業部会は2日目の6日、北朝鮮による拉致問題を中心に議論が行われ、日本側は北朝鮮に対して、拉致被害者の早期帰国、事件の真相解明、拉致の容疑者の引き渡しなどをあらためて求めました。これに対して、北朝鮮側は「これまで被害者や家族の帰国の実現をするなどして、実行できるかぎりのことをやってきた。日本と北朝鮮の関係は悪化しており、新たな措置を取ることはできない」述べ、拉致問題について具体的な進展はありませんでした。これに対して、日本側は「拉致問題の解決なくしては国交正常化はできない」と説明し、双方は今後、国交正常化に向けて誠実に努力して、具体的な行動を取るため協議を続けていくことになりました。協議終了後、日本側代表の美根大使は記者団に対し、「拉致問題をはじめ日朝間の懸案が解決されたわけではないが、じっくりと意見交換できたことは一定の成果と考えている。国交正常化に向けた具体的な行動についても協議を実施していくことで合意したことは、将来につながる積極的な要素だと考えている」と述べました。日朝の作業部会は6日の拉致問題で2日間の日程を終え、協議の内容を今月中に開かれる6か国協議に報告することにしています。

 美根大使!国民をミスリードすな!
 「一定の成果」〜?「将来につながる積極的な要素」〜?
 ……ものは言いようですね(-.-#)

 一部(多くの?)マスコミも国民をミスリードするような報道をしてますね。
 特にひどいのがこの二つの社説。

朝日新聞社説:日朝協議—氷を解かす契機に(9/7)
北海道新聞社説:日朝協議 対話の機運を歓迎する(9/7)

 主張内容はほぼいっしょです。
 「北朝鮮の態度は変化してる。いい雰囲気になってきてる。日本も譲歩せよ。バスに乗り遅れるな。水害で人道支援せよ」——。
 何ですかね、この2社は。示し合わせてるんですかね。

 人道支援なんか必要なし!一回やったら癖になります。
 そもそも日本が人道支援を停止したのは、横田めぐみさんの「ニセ遺骨」問題に抗議して、というものだったはずです。最低限この問題で進展がない限り、絶対ダメです(産経9/7付:日朝作業部会 危険な「人道支援再開」参照)。
 ちなみに朝鮮総連の水害支援を巡る貨物船入港許可の要請は突っぱねたようで、これはGJでした(朝日9/6)。
 
 話を社説に戻して、意外だったのは東京新聞です。ふだんはかなり電波な主張が多かったりするんですが、今回はかなりまとも。

東京新聞社説:日朝作業部会 孤立論に乗せられるな(9/7)

 他紙はこうなってます(産経と毎日は本日は別のテーマ)。

読売新聞社説:日朝作業部会 「北」の揺さぶりに警戒を怠るな(9/7)
日経新聞社説:日朝交渉「拉致」進展が先決(9/7)


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 拉致問題が停滞してしまっている原因は何なんでしょうか?
 改めて考えてみましょう。
 
 まず外的要因で一番大きいのは、何と言ってもアメリカの豹変ですよね。

 あれほど強硬だったブッシュ政権が、今年に入ったあたりから北朝鮮に擦り寄り始めました。
 ブッシュ政権にとって、対イラクで明るい兆しが見えない限り、よそで外交成果を上げるしかありません。それが対北朝鮮だった、と。
 金融制裁を解除し、今やテロ支援国家指定までをも解除しようとしています。

 では内的要因は?日本側にも原因があるはずです。

 「諸君!」10月号で京都大学の中西輝政教授は、【「9・17の誓い」と日本の覚醒】と題された論文の中で、安倍総理の「あいまい戦略」と保守の怠慢に言及しています。

 中西教授によれば、約10年前から日本の保守は「上げ潮」に入りました。
 1996年12月に「新しい歴史教科書をつくる会」が創立し、1997年3月には拉致被害者家族の会が結成されました。
 そして2002年9月17日の小泉訪朝とともに、拉致問題の真相の一端が明らかになりました。

 中西教授はこの2002年9月17日が、日本人の意識を変える大きなターニングポイントであった旨、主張しています。

 いまでも多くの日本人がその時の映像を鮮やかに思い起こすことができるであろう。早朝、小泉純一郎首相が特別機で平壌に乗り込み、金正日と握手して首脳会談に入った。拉致被害者の安否の情報が刻々と日本にもたらされた。外務省の飯倉会館に陣取った福田康夫官房長官が家族ごとに部屋に招き入れ、「お宅は死亡です」、「お宅は生存です」、と残酷な宣告を行った。こうして福田氏は「拉致」に一刻も早く終止符を打ち、直ちに国交正常化に進もうとした。氏が拉致被害者をはじめとした日本人を売ろうとした政治家であったことは今も覚えておいた方がいい。

 続いて拉致被害者家族の記者会見がおこなわれた。明暗を分けた家族一人ひとりがマイクを前に語った言葉は、まだ多くの国民の耳に残っているはずだ。特に横田めぐみさんに関する「死亡宣告」を受けたばかりの横田早紀江さんが語った言葉は、日本人ならば誰もが忘れることのできないものだ。

 「日本の国のために、このように犠牲になって苦しみ、また亡くなったかもしれない若い者たちの心の内を思ってください」。彼らはこれが日本の「政治の中の大変な問題であることを暴露しました。このことは本当に日本にとって大事なことでした」。国家としての日本がすでに存在をなくしていたことを知らせるため、「めぐみは犠牲になり、また使命を果たしたのではないかと私は信じています。いずれ人は皆死んでいきます。本当に濃厚な足跡を残していったのではないかと思うことで、私は頑張ってまいりますので、皆さまと共に闘ってまいります」

 「国家とは何か」という、確信的な問いかけに、あれだけの関心が集まったのは、あの終戦の日、昭和二十年八月十五日以来のことであったといってよかろう。この日の出来事は日本人の同胞に対する意識を決定付け、今後、けっして風化することはないだろう。その後の歴史を決定付けるような出来事が訪れた瞬間を、英語で“defining moment”(決定的瞬間)と呼ぶが、まさに九月十七日のあの日は、その後の日本の歴史における「決定的瞬間」が訪れた日だった。

 そして被害者家族が語った言葉はこの日の出来事の象徴となって、その後の日本のあり方を大きく変えることになった。

 日本人の国家観は確かに変わりました。
 外交に対する考え方も変わりました。友好一辺倒ではなく、言うべきことははっきり言う、そんな外交を政府に求めるようになりました。
 これまで北朝鮮を擁護してきた左翼勢力は凋落しました。マスコミの北朝鮮報道も一変しました。

 そして安倍政権の誕生。北朝鮮に対してはもちろん、中国や韓国にも言うべきことをはっきり言う政権。この政権ならやってくれる。
 保守は大いに期待しました。

 が、安倍さんはその期待に反して、「あいまい戦略」を取りました。
 総理に就任早々、中国(と韓国)を訪問、関係修復に乗り出したのです。
 それが間違いのもとだったのかもしれません……!?

 そのあたり、中西教授の論文から再び引用。

 あるいは停滞した拉致問題の打開のために、北朝鮮の“宗主国”に等しい中国を抱き込む戦略を描いた外務官僚がいたのかもしれない。しかし日中間には本質的な変化は何も起きていないのである。たとえ就任直後の日本国首相が同盟国アメリカへの訪問より中国を優先したといっても、ただ外交上のサービスだけで、対立する二つの国の関係が飛躍的に改善することなどあり得ない。

 こういったコスメティック(化粧)な変化は、厳しい現実を覆い隠し、国民の現状認識を誤らせる。つまり日本の真の「敵」がだれであるのか、日本が対峙しているのは何なのかをわからなくしてしまう。すべての対立がもやもやとした関係に化け、日本が抱える対外関係の本質はいつの間にか雲散霧消してしまったかのような錯覚に陥ってしまうのだ。これは必ず、政治指導者に対する「冷めた眼」を生み、それまでの「上げ潮」が方向を見失うことにもつながる。このことが果たしてどこまで意識されていたか。

 その「冷めた眼」と「潮流の散乱」現象は、拉致問題に対する、それまでのモメンタムをも鈍らせてゆき、日本の政治の中心から拉致問題の影がはっきりとうすくなっていった。それに伴って拉致に関心を寄せる世論自体もどことなく弛緩し始めた。

 「アメリカの豹変」によって六カ国協議が“進展”し始めると、「拉致問題が置き去りになるという恐れはあるけれど、いますぐ核ミサイルが飛んでくることはなくなった。核実験ももうやらないだろうし……」というように、有権者大衆の心も変質し、「拉致問題に取り組む安倍首相」というオーラは霞み、内政の「年金」や「閣僚の失言」に焦点が移らざるを得なくなっていった。

 中西教授はこの後、今年4月に訪日した温家宝首相が衆院本会議場で演説を行った際の、与野党議員の反応について批判しています。
 演説終了直後、与野党議員は総立ちで拍手したが、その演説は、日本の国益を主張すべき人々が拍手喝采して迎えるような内容だったのか、と。

 その上で中西教授はこう続けます。

 意味もわからずに拍手喝采した国会議員もまた、明白な対立イシューはあたかも存在しないかのような錯覚に陥っていたのである。「あいまい戦略」は、外交的思考に未熟な大衆をして、厳存する対立を見過し錯覚に陥らせる危険があるのである。そして「中国や北朝鮮と仲良くなったなら、もう安倍さんでなくてもいいよな」ともなる。中国にあれだけ警戒感を持っていた日本の保守も、「中国と和解するといっても、安倍さんのことだから、宮澤さんや橋本さんのようなことはないだろう」と安心し様子見を決め込んでしまった。しかし一方、大衆の中にも、テレビの街頭インタビューに答え、「中国の首相のジョギングを見ていても、目は笑ってませんでしたね」と語った主婦がいたが、政治の素人の方がよほど鋭い直観を有していたのである。

 これは明らかに保守の怠慢だった。例えば、米朝接近に賛意を示し続けているヨーロッパであっても、アメリカの対北交渉の行方を楽観する向きはほとんど見られない。アメリカと北朝鮮という、水と油のような政治体制をとるくにどうしが国交を正常化する話し合いをしているのには、何か「狙い」があるはずだ。「アメリカは、何の声も挙げない日本を軽んじ、拉致でも有無を言わせぬようにしておいて、走り出したのだ。可哀相な日本!」というのが国際関係を熟知した欧州人の判断なのだ。

 それに対して日本のメディアは現状追認ばかりを繰り返している。六カ国協議の合意の先には、アメリカのテロ支援国家指定解除があり、それから米朝正常化が実現するという解説を、まるで他人事のように冷ややかに披露している。このままでは拉致問題は国際社会の舞台から姿を消すだけでなく、日本人の意識からもはるか遠くに消えてしまうに違いない。それなのにこの危機感のなさはどうしたことだろう。「そういえば拉致問題はどうなるんでしょうねえ」というのが国民の一般的な反応になってしまう日がもし来たとしたら、それでも日本は「国家」といえるのだろうか。

 「安倍さんなら大丈夫」「これで日本も良い方向に行くだろう」——。そういう油断や怠慢が保守の間にあったのは明らかでしょう。私もそうでした。


 実は安倍政権の誕生は、民間で拉致問題に取り組んできた人たち(家族会や支援者たち)にも、油断や怠慢を呼び込むことになってしまったようなのです。

 というのも、同じ「諸君!」10月号、特定失踪者問題調査会代表でもある荒木和博・拓殖大学教授が、【安倍総理は開き直って「拉致解決」に邁進する】と題された中川昭一議員(当時は自民党政調会長)との対談の中で、次のように発言しているのです。

 失礼を承知であえて申し上げますが、何十年もの間、日本の政治の構造自体が拉致問題の本質を隠蔽してきたのではないかと私は疑っています。自民党だけでなく、現在の民主党、他の政党の人たちも含め、拉致という、取り組めば間違いなく戦後政治の矛盾につきあたる問題を国民の目から隠してきた。この構造が変わらないまま、その上に安倍政権が乗っかった形になっている。まず根本にある体質を変えないと、問題解決は非常に難しい。

 もちろん民間のほうにも原因はあります。去年九月、安倍政権が発足した際、われわれは非常に大きな期待を抱きました。今まで拉致問題に率先して取り組んできた人が総理大臣になり、総理自身を本部長とする「拉致問題対策本部」が内閣に設置された。さらに拉致被害者や家族の方々に信頼の厚い中山恭子さんが担当補佐官になって、体制も整った。

 ところが同時に、「もう大丈夫だろう」という意識が芽生えてきたんですね。家族会発足から十年、中川さんたち拉致に取り組む政治家のバックアップを受けながらも、自分たちの手で何とかして解決への道筋をつけようと支援者たちも肚をくくってやってきました。それが世論も含め、「安倍政権ができたのだから、もう任せておけばいい」という雰囲気になってしまった。そのことに危機感を持って、「安倍政権であってもおかしな方向へ行くことがないか、冷静に見つめていくべきだ」と訴えてはいるのですが、拉致問題への関心が高い人には安倍政権に対する信頼感の強い人が多いようで、その結果、国民的運動としての運動量、一般の関心はむしろ低下したように思えてなりません。

 このくだりを読んで、私はハッとしました。
 有本嘉代子さん(有本恵子さんのお母さん)が似たようなことをおっしゃっていたのを思い出したからです。

 拙エントリー7/12付:「アンカー」有本恵子さんご両親インタビューからプレイバック。

青山繁晴
「前にお目にかかった1年半前と、今の、今日ですね、その間の出来事考えると、何か動きがないと報道しないから、北朝鮮の核とか6カ国協議とか、そういう話はいっぱい出るけど、拉致被害者や、それから被害者の家族の方が今どうされてて、で、日本国民や日本政府にどうしてほしいかって話が、この1年、ずいぶん減ったと思うんですよ」

有本嘉代子
「だからあの、この頃ね、よく言われるんですね。ほんとに、この、あの、『拉致が進展なくて、ほんとに気持ちの上で、イライラなさいますでしょ』と言うてる方があるんですね。で、『私たちも見とってね、イライラしてるんですよ』って、どこ行っても、何かの人が声かけて、そない言うて下さるんですけどね、私はそうじゃなくて、今ね、この、今まで運動してきた中でね、一番気が穏やかなんですよ

青山繁晴
「ほぅー」

有本嘉代子
「あの、もう、相手があることでしょ。あの国がもう、どう動くかですけど、あの国が動かんことにはこれ、解決しないんですよ、絶対に」

青山繁晴
「まあはっきり言うと、あの体制が変わらなければ、解決はしないと思うんですけど、最終的には」

有本嘉代子
「だけど、国内はもうきちっと、することして下さってるという気持ちがあるのでね。一番今、心安らか言うたらおかしいですけれど、そんな気持ちです

 青山さんはおそらく暗に「金正日体制が続く限り、いくら安倍さんでも解決は無理なんですよ」と言っているのだと思いますが、嘉代子さんは安倍さんなら何とかしてくれると安心しきっておられるように見えます。

 その後の「アンカー」では、参院選と有本家を絡めた特集がありました(拙エントリー8/2付:「アンカー」小沢が創価と接触?&拉致家族の7・29参照。後半部分です)。
 嘉代子さんはそこでも、このようにおっしゃっています。

有本嘉代子
「安倍総理がなられてから1年近くになるけれど、全然動いてないじゃないかって。当たり前ですよ。19年20年経ってもこんだけしかできてないのに、半年や1年で解決するなんて私ら全然思ってません。今までの人はきちっとしてくれなかったから、その方に気が、もう何とかしてもらわなんという気持ちがあったけども、今は安心して安倍総理に任せといたらいいという気持ちでおりますから、気分的にはもう一番楽なんですよ、今

 有本恵子さんのお父さんである有本明弘さんも、同じようなお気持ちでいるようです。
 参院選で自民党の歴史的惨敗が決まった朝、明弘さんの目には涙がありました。


 私は別に有本さんや家族会を責めているのではありません。と言うより、いったい誰がこの方々を責められるでしょうか?

 拉致被害者ご家族は何十年も冷遇されてきました。
 政治家、外務省、マスコミ、誰もほとんど動いてくれませんでした。
 動くどころか逆に妨害をするような連中もいました。
 
 たとえば、有本さんは地元の大物国会議員である土井たか子の事務所に相談しましたが、事務所は北朝鮮から家族宛に届いた石岡亨さん(有本恵子さんと一緒に北朝鮮にいた)の手紙のことを朝鮮総連に伝えるという、とんでもないことをしました。

 家族会が結成されて5年半後の2002年9月17日、小泉総理が訪朝し、拉致問題進展への扉がようやく開きました。
 小泉総理の功績は確かに大きいですが、2004年5月22日の再訪朝以降は拉致問題に積極的ではなくなってしまいました。

 再訪朝時の小泉総理と金正日との会談はわずか1時間半。
 家族会と支援者が感じたのはただ怒りだけでした。
 「小泉総理はきちんと主張すべきことを主張をしてくれたのか?」——。
 ふだん温厚な横田滋さんですら、記者会見で「予想していた範囲の最悪の結果」という非常に強い言葉を使ったぐらいです。

 当日夜の小泉総理と家族会とのやりとりは、家族会には何の説明もないまま、一部始終マスコミに公開されました。小泉総理の真意がどこにあったのかは今も謎です。
 直後から家族会・救う会には批判や嫌がらせのメール、ファックスが殺到し、バッシングはしばらく続きました。
 とにかく再訪朝以降、拉致問題は停滞してしまいました。

 そんな中、対北強硬派で拉致問題に長年取り組んできた、家族会からも絶大な信頼を得てきた安倍さんが総理大臣になったのです。
 有本嘉代子さんはじめ家族会の方々が「安心」されたのは、ごく自然な流れです。


 拉致問題で進展が、それも「目に見える」進展がない以上、マスコミも取り上げませんし、国民の関心が薄まってしまうのは仕方ないのでしょう。

 が、この状態が長く続けば、中西教授が懸念しているように、「日本人の意識からもはるか遠くに消えてしまう」ことにもなりかねません。
 拉致問題の解決を願う私たち国民は、いったいどうすればいいのでしょうか?


 再び「諸君!」10月号【安倍総理は開き直って「拉致解決」に邁進する】、荒木和博教授と中川昭一議員の対談より、今度は中川さんの発言をいくつか箇条書きにしてみます。

●「対話と圧力」といっても、もっぱら重視されるのは対話のほうで、圧力は言葉だけにすぎないことを敵に見透かされている状況ではないでしょうか。拉致被害者を返さないのであれば、日本も国際社会も強硬手段を取るということを、はっきり北朝鮮に示さなければ進展はない。

●いまのような膠着状態が続けば、被害者を「奪還」するという選択肢も視野に入れなければなりません。それほど拉致は緊急性が高く、重い問題です。最近、「拉致問題にばかり関わっていては前に進まない。核問題における日朝交渉にプラスにならない」と私に対して、面と向かって言う国会議員がいますが、私の中で北朝鮮の拉致と核の問題は、同じ重さを持っています。唯一違うのは、拉致問題は過去から現在まで「継続中の主権侵害問題」であるということ、先ほど荒木さんもおっしゃったように、すでに何百人もの人たちが拉致され、今後もさらに被害者が出る可能性が否定できない国家犯罪だということです。それに対して、核問題やミサイル問題というのは、将来の危険のために対処しなければならないというものの、現在はまだ「起こってはいない問題」です。その点が決定的に違うことを押さえておくべきだと思います。

●マスコミにもお願いしたい。一部マスコミは「拉致はけしからん」と言いながら、一方では「話せばわかる。対話をしよう」と矛盾した主張を平気で展開する。話してすむくらいなら、とっくに解決してますよ。そういう論調がクオリティ・ペーパーと呼ばれる新聞にあらわれるのを見て、北朝鮮はタカをくくっているのです。どうせ日本は本気でこぶしを振り上げたりできない、と。

●六者協議でも、日本があまり拉致にこだわりつづけると、アメリカや中国、韓国の宥和的な流れから取り残される、つまり「バスに乗り遅れちゃうよ」という議論があるけれども、私はちっとも構わない、場合によってはそんなバスになんか乗らなくてもいいと思っています。拉致被害者を取り戻すという日本の主たる目的ははっきりしているんですから、アメリカや中国につき合えない時はつき合えないと、はっきり伝えればいい。

●増元るみ子さんのお父上、増元正一さんが亡くなられたときの、「ワシは、それでも日本を信じる」という言葉、あの言葉は重いですね。それに報いるためにも、私も最大限の努力は尽くします。北朝鮮への最大の圧力は、何といっても世論です。日本という国家の根本を揺るがす大問題として拉致を捉える国民の皆さんから、被害者を救う運動を強く押し上げる力が、北朝鮮への圧力になります。その力があって、関連法案の制定やさまざまな行政行為が可能になるのです。

●自民党は参院選に大敗してしまいましたが、北朝鮮から見ると、安倍政権というのは厄介な政権だと思います。政治家や国家権力が主権の行使として何をなすべきか、われわれは充分に考えていきます。国民の皆さんには「拉致問題をどうするのか、政府は何をしているのか」とつねに厳しい問いかけをお願いしたいと思います。

 そう、やはり世論の力、世論の後押しが一番重要なのですね。

 皆さんご存知の通り、中川昭一さんは安倍さんに勝るとも劣らない対北強硬派です。
 一昨年、国会前で家族会の方々が経済制裁を求める座り込みをした時、「国会議員として申し訳ない」と言ったのは、当時、自民党幹事長代理だった安倍さん、拉致議連幹事長の西村眞悟議員、そして中川さんの3人だけだったそうです。

 この人が現在、内閣や党の要職にいないことを本当に残念に思います。


 話は少し違いますが、最近、宮崎哲弥氏はこのような意見をよく言われています。
 「日本はアメリカに要求すべきだ。『テロ特措法を延長してほしいのであれば、北朝鮮のテロ支援国家指定を解除するな』と」。
 つまり「テロ特」を対アメリカの外交カードにせよと。

 実際のところ、参院で与野党が逆転してしまった今、テロ特措法延長はかなり難しいようです。
 が、こういった危機ですら逆手に取って何かを得ようとする気概、もっと言えばしたたかさみたいなものが、安倍さんには基本的に欠けているように見えます(総理になるまではもっとしたたかさがあったように思うのですが)。

 私はその意味では、“麻生総理”の方が上手く立ち回れるのではないかと思います。
 麻生さんに関しては、靖国問題や北方領土問題などで私とは少し考え方が違ったりするんですが、少なくともこの人は、安倍さんのような「あいまい戦略」をとったりはしない、保守を油断させたり、国民を不必要に安心させたりということは減るはずだ、という気がします。
 あくまで個人的な印象ですけども。

 ただ、“麻生総理”で拉致問題が進展するのかと言われると、それにはちょっと疑問も感じるんですけどね。
 非常に合理的な物の考え方をする人だと思いますので、「最後の一人まで帰ってくることが解決」という政策を貫いてくれるかどうか。

 となると、拉致問題に関する限り、やはり安倍さん以外には任せられないと私は思います。
 金正日が安倍晋三以上に嫌う人物が現れない限りは。


 結局、私たち国民にできることは何かというと、やはり一人一人が拉致問題に関心を持ち続けること、そして安倍さんや政府にハッパをかけ続けることしかないのだと思います。

 「目先の情勢にとらわれないで、どうか原則を貫いて下さい。最後の一人まで奪還して下さい」と。
 さらに、あえて言うなら、「安倍政権が拉致問題で北朝鮮に譲歩をするようなことがあったら、その時こそが安倍政権の終焉です」と。


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