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映画「この世界の片隅に」が追求したのはイデオロギーよりリアリティー

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 12月3日(土)に、映画「この世界の片隅に」を鑑賞してきました。

 映画館に行ったのは久しぶりです。
 「永遠の0」以来でしょうか。
 
 原作は、こうの史代さんの同名の漫画です。

 こうの史代さんの「夕凪の街 桜の国」と「この世界の片隅に」が私は大好きで、毎年、夏になると必ず読み返しています。
 3年前の夏には、こんなエントリーをUPしました。

2013/8/12付:「はだしのゲン」より、こうの史代さんの漫画をお薦めします

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 映画「この世界の片隅に」のストーリーはほぼ原作通りです。

 戦前~戦中~戦後間もなくの広島が舞台です。

 中でも主な舞台は広島の呉市。
 主人公の「すず」がお嫁に行った先です。

 「すず」は絵を描くことが好きな、おっとりとした18歳の女性です。

 戦時下の庶民の暮らしをユーモアを交えながら描写しているのが、この作品の大きな特徴です。

 厳しい時代でありながら、ほのぼのとした感じで、映画も原作と同様、クスッと笑ってしまうシーンがたくさんあります。

 戦時下を描いた物語というと、とかく暗い部分が強調されたり、イデオロギー色が前面に出たりするものですが、この作品ではそういうことはありません。

 毎年夏にやってるような反戦ドラマの多くは、後付けの戦後民主主義の思想で、「こんな戦争は間違ってる!」とか登場人物に語らせたりしますが、もちろんそんなことも一切ありません。

 何しろ、憲兵さんに怒られるという普通なら緊張するシーンも、この作品では笑いに変わっていくのです。

「『昔の人は愚かだったから戦争をしてしまった。そしてこんな貧しい生活に…』というように片づけられる気がするんですけど、彼らは彼らなりに工夫して幸せに生きようとしたということを、この作品で追いかけて、つかみたいというふうに思ったんです」(2016年10月19日 NHK「おはよう日本」より、原作者こうの史代さんのコメント)

 あえて言えば、「日常の中にたまたま戦争があった」というテイスト。

 もっとも、日本の敗色が濃厚になるにつれ、日常は少しずつ壊れていきます。
 最初は「日常の中に戦争がある」だったのが、「戦争の中に日常がある」に逆転していく感じ…。

 それでも、最後には希望が示されています。

 原作もそうでしたが、映画も押しつけがましさが全くありません。

 普通の(?)反戦映画であれば、「戦争は悲惨だ」「戦争は二度としてはならない」という決まり切った感想しか出てこないでしょうが、この作品にはそれは当てはまりません。

 見た人それぞれ抱く感想は違ってくると思います。
 先入観にとらわれず、自分の頭で判断したり、自分の感性で受け止めることができるから。


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 私は映画館で映画を観るということをあまりしません。
 「この世界の片隅に」も、映画館では観ないだろうと思っていました。
 近隣の映画館では当初、上映予定がなかったからです。

 ところが、たまたま「この世界の片隅に」公式サイトから劇場情報を見てみたら、12月3日(土)から急きょ上映が始まるとのこと。
 知ったのは前日、金曜の夜でした。

 12月に入るとクリスマス明けまで、私の仕事(印刷関係)は非常に忙しくなります。
 「行くならもう今週末しかない!」と決意しました。

 実は私は12月初め、歯根端切除術という施術を受けていました。
 歯の根っこにできた膿を、歯茎を切開して取り除く、いわば外科手術です。
 施術自体も憂鬱ですが、術後の経過が良くない場合、歯を失ってしまう可能性もあります。

 そういうわけで、施術を受けることが決まった日から、私は「やさぐれ」ていました。
 見かねた夫が、「施術が終わったら、どっか好きな所に連れてってあげるから」と言ってくれていました。

 それを思い出して、私は「映画に行きたい!」と夫に直訴しました。
 どんな映画なのかは、翌日劇場に行くまで伏せていました。

 夫もあえて尋ねてきませんでした。
 夫としては、「好きな所に(どこでも無条件に)連れてってあげる」という気構えでいたみたいです。
 いつもの夫だったら、「え?アニメ?興味ないわ。一人で行ってきたら」と絶対断られていたはず(^_^;

 映画館に着いて、上映中の作品一覧を見た瞬間、夫は「あ、このアニメ観る気やな!?」とズバリ言い当てました。
 やっぱり分かるか~(^^ゞ

 夫は、観賞後、「この話、前に見たことがある」と言いました。
 数年前にドラマ化された時、私が見ている隣で「ながら見」をしていたので、うっすら覚えていたのだと。

 「だいたい良い物語やと思うけど、ドラマの時も思ったけど、やっぱり『すず』があんなこと*1になってしまうのは嫌や!」というのが夫の感想。

*1 ある意味ネタバレなので、具体的なことは伏せておきます。

 個人的な話が長くなってすみません(^^ゞ
(このくだり、要らんかったやろというツッコミが聞こえる…)

 ちなみに、初日にも関わらず、映画館はほぼ満席でした!

 若いカップルから年配の方まで、客層は幅広かったです。
 でも多かったのは30代~40代ぐらいかな?


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 片渕須直監督はじめスタッフは、当時の様子をできるだけ正確に映像化するため、広島と呉に何度も通ったそうです。

「当時の航空写真をもとに土地の高さなどを割り出したり、戦艦や一軒一軒の家の大きさも正確に描きました。それくらい検証には時間をかけています」(パンフレットより、監督補・画面構成の浦谷千恵さんのコメント)

 現地の戦争経験者の方々に直接話を聞いて、街並みだけでなく人々も再現するという力の入れようです。

 たとえば、幼い「すず」が広島市に行った時の場面で、ちらりと映る理髪店とその前にいる家族は実在した方々です。

 軍事に詳しい方もこのように称賛しています。

 続きは以下のまとめを。

『この世界の片隅に』弾薬雑考その1(高角砲着色弾)

 この「色付きの爆煙」は原作にはありませんが、他にも原作にない場面はいろいろ出てきました。

 たとえば、これは12月2日放送のフジ「ユアタイム」で片渕監督から説明があった、女学生たちの場面。

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監督のそうしたリアリティーへのこだわりは、こんなシーンにも現れている。
兵器などの製造に駆り出された、女学生たち。
原作には登場しないが、当時を知る市民から、「駅前をよく歩いていた」と聞き、シーンに入れた。
そこには、こんな思いが込められていた。
片渕監督は「女学生たちが、かなりたくさん、防空壕で生き埋めになってしまったらしいんですよね。それを助けに行った、当時中学生だった男性の話とかうかがって、とにかく掘って、人工呼吸するんだけど、かわいそうだったって話とか。なんとか、その女学生たちの姿を、画面に残したいなと思って、駅前にそうやって歩かせたりとか。1人ひとり、人生があって、そこを生きていた方々ってことですよね」と話した。

 あと、空襲で被害に遭った人々のために、役人(?)が「おにぎりが届いています~」と自転車で回って呼び掛ける場面も、原作にはありません。

 これについては、監督曰く、

(製作中も、3.11(東日本大震災)があったと思うのですが、何かそういう意識などはあったのですか?)
片渕監督「僕らも一生懸命、被災地に向かって、粉ミルクとか、おむつとか、一生懸命、送ることをやっていたんですね。でも、それは、同じことが、戦災でもあったということなんですよ。夜に、空襲があって、朝になった時には、もうすでに、隣の町の広島から、何万個っていう、お握りが届けられていたりするんですね。ある意味でいうと、逆に、この映画を描くと、震災のことも描くことになるんじゃないかなと思いました」

 このようにリアリティーを細部まで追求した映画であることは、たとえば以下の動画からも分かります。

おはよう日本「この世界の片隅に」特集



 おすすめ映画であることに変わりはないのですが、原作ファンとしては、映画の中でひとつだけ、どうしても不満な点がありました。

 それは、原作にあった、周作(「すず」の夫)と「リン」のエピソードが丸ごとカットされていたことです。

 原作では、周作と「リン」が過去に恋仲だったことを「すず」が知り、人知れず苦しみます。
 自分は「リン」の“代用品”なのか?と…。
 少女のような「すず」の、大人の女の部分が描かれています。

 私なりの見方では、原作で大きなウェイトを占めるエピソードです。
 これを丸ごとカットしてしまうって、どうよ?*2

*2 ただ、周作の“切り取られた帳面の裏表紙”(周作と「リン」の関係に「すず」が気づく伏線)は、映画でも再現されていました。

 カットしたのはなぜ?
 尺が足りなくなるから?
 無理に詰め込むと、観客に分かりづらくなるから?

 …答えは、ブログ「ナガの映画の果てまで」様にありました。

ユリイカ「この世界の片隅に」 感想 【片渕監督の込めた「すず」という少女への愛】

 少なくとも、尺が足りないからとか、そんな単純な理由でカットしたのではないことは分かりました。

 映画のエンドロールの最後、クラウドファインディングのクレジットの下に、ラフ画で「リン」の生い立ちが描かれていましたが、そこに監督の思いが込められていたようです。

 でも、やっぱり私は納得できません…(T_T)

 「リン」のエピソードがカットされたことで、「すず」像が原作とは違うものになってしまったと思うからです。

 具体的には、映画だけを見た人の中には、こう感じてしまった人もいたのでは?

「周作は幼い頃に出会った『すず』への思いを貫いて、彼女をお嫁さんにしたのに、『すず』の方は、結婚後も別の男性(水原さん)に思いを残していたのか…」

 つまり、周作は一途なのに、「すず」は身持ちがあまりよろしくない…てなふうに、誤解してしまった人もいたのではないかしら?


 一方で、私が原作で一番ゾッとしたというか、何とも言えない感情に襲われた、「すず」の近所のおばさんのエピソード*3をカットせず残してくれたことについては、監督に感謝したいです。

*3 被爆した行き倒れの兵隊を自分の息子だと気づいてあげられなかったおばさん。2013/8/12付で紹介しました。

 小さなエピソードですが、原爆の残酷さを、人間の感情の深い部分にじわりと訴えかける、秀逸なエピソードだと私は思っています。


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 もう1つ、触れておきたいのは、原作ファンの間で一部話題になっていた、昭和20年8月15日の玉音放送後、呉の町に韓国国旗の太極旗のような旗が1本掲げられる場面です。

 ここは、イデオロギー色の非常に薄い原作で唯一、イデオロギーめいたものが示された場面でした。

 原作ではたった1コマ、映画でも遠目にほんの数秒です。

 ところが、旗を目にした時の「すず」のセリフが、実は原作とは全く違っているんです。

 セリフを変えた理由について、監督は産経新聞のインタビュー(「この世界の片隅に」をめぐる“国旗”論争 政治的意味合いを回避したあるセリフとは)で、こう語っています。

「すずさんは当時食べていたお米の何%が朝鮮米か台湾米かを知っていた。あるいは、お米がなくなった代用食として入ってきた大豆は満州産だった。だから、 自分は海の外から来たお米でできていると言った方が、すずさんらしさがより出るかな、と。彼女は朝鮮米を食べていたっていうことなんです」
「すずは、本当に朝鮮のお米を食べていたということ。これはリアリティーだと思ったんですよね」
原作にもあるし、あの旗を削ると、むしろ政治的な意味になると思う。今までご飯を作ることで彼女が存在意義を持っていたんだとしたら、彼女はそのことを認識すべきだということで、このセリフになっているんです」

 ひと言で言えば、やはりイデオロギーよりリアリティーを追求したということなのでしょう。


 この映画、当初は上映館が少なかったのですが、その後SNSなどで「良い映画ですよ!」と評判が広がった結果、現在では上映館はかなり増えています(おかげで私も観ることができた)。

 全国180館を超える見込みで、これは当初の3倍近くの数だそうです。

 また、すでに海外での上映も決まっているそうです。
 11月の時点で、イギリス、フランス、メキシコ、アメリカなど世界15カ国。

 皆様も、宜しかったら是非ご鑑賞下さいね!

 年末~年明け以降に上映が始まる所も多くあるので、ぜひ「この世界の片隅に」公式サイトから劇場情報をチェックなさってみて下さい。


 最後に…
 のんさん(旧芸名・能年玲奈さん)の柔らかでおっとりした声は、「すず」にピッタリでした!

 ドラマでは北川景子さんが演じたのですが、申し訳ないですが、全くイメージと合ってませんでした。
 美しい方ですが、都会的すぎるというか、大阪弁で言えば「シュッ」としすぎてた…。







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